ある電話/I.Yamaguchi
 
のが苦痛だ、といって彼女は泣いた。かといって、どれだけ大変かわからないのだけど、心配だと伝えたいのだろう、と説明すると、くどいと言うのだった。最近になって毒舌を吐くな、とマキは言ったが、僕は毎日誰彼構わず悪口を言っていた。
 気づくと電話ではにゃぁというようになっていた。僕の言うことに込めた感情は、電話先でも直接会ったときと同じように、彼女に理解されていたが、いつそれが彼女にとって無表情に見えるか知れなかった。僕は彼女に会うとセックスしかしないようにしていた。抱いた後、自分が寝るまで寝るなという彼女が先に目をつむるので、僕はマキの目を見る必要はなかった。寝付いた後に、トイレに行こうと注意深く彼女
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