ある電話/I.Yamaguchi
 
は?、ともう二度言われても何も思い浮かばなかった。
「にゃあ」
 と返したが、僕は彼女がここで突然死ぬとか言い出すのではないかと漠然と感じていた。その時、あと何度好きだとか言う必要があるのだろうと、一万円をすでに超えていた今月の通話料のことを考えた。いい加減うるさくなったやかんを止めようと立ち上がると、
「何で別れるって言わないの?」
 と、耳をつんざき、僕は足を少しよろめかせてしまった。
 さっき電話がかかってきたときにマキと交わした会話だった。一言も漏らさないように聞いていたが、電話のスピーカーのおかげで、声の大きさが耳に残ったのは一瞬のことだったが、その分後になると、一言一言がネオ
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