ある電話/I.Yamaguchi
別れないことになっていた。昨日作ったタマネギを冷蔵庫から取り出すと、水が抜けたせいか辛くなくなっていた。
食事が終わった後、フライパンのフタを開けるとゴミ箱に全て捨てたはずの卵の殻がフライパンの中にひとかけら落ちていた。目玉焼きを作ったときには気づかなかった。よく焼けて、クリーム色になったそれを手にとると、すでに冷めていた。僕はそれを見てふと祖父の骨を思い出した。
骨壷の中に足から入れていき、最後に咽喉と無数のかけらだけが残っていた。火葬場の職員が骨片を注ぎ込むと、最後に咽喉の骨を乗せないと口が利けないのだと言って祖母がのど仏を乗せた。こんなにきれいにのど仏が残るのは珍しい、と話す職員のこ
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