ある電話/I.Yamaguchi
ら電話をすることも胎教の感を強くさせた。マキも同じ格好で電話をしていた、と見えないマキのいつかピンク色と言っていたパジャマのまだ見ぬ赤い襟元までが確信をもって思い浮かんでいた。
さっきの電話ではじゃあね、という言葉の二百倍は好きだよと囁き続けたはずだった。その囁きと一つのじゃあね、とどちらの方が彼女の頭の中に入っているかは置いておいてもどちらの言葉も僕の聞いた悠の言葉と同じようにマキの頭にしみこんでいるのに違いなかった。僕は体を布団の中から出したかった。もう一回電話しようと携帯をとって彼女にかけたが、彼女はもう眠ってしまったらしく留守番電話に変わっていた。じゃあね、と言った後、待ってと返したの
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