ある電話/I.Yamaguchi
 
人のストレスを引き受けることが無意味だ、と言うつもりか、それともただ、女についての愚痴を言われることが嫌なのか、よく分からなかった。しかし、それでも、本当に別れるか別れないかというときは誰かが止めてくれるだろう、と僕は漠然と考えていた。
 もう一度電話をとって、ディスプレイを見ずにボタンを押すと、さっきより低い声で、もしもし、と悠が言った。事情をあらかた伝えると、彼女は少し黙っていた。
「先輩疲れてるでしょ」
「ああ」
「マキちゃんは放って置いて寝たほうがいいよ」
「眠れないよ」
「見方によっては良かったのよ」
 悠はやはり自分のことをわかっている、と思った。そして、彼女は僕の求める
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