ある電話/I.Yamaguchi
うしても今日の会話の最後の方の、うんという低い声が耳に残った。彼女の声はジャネット・ケイも驚くほどに高いので、声が低いときは、本当に喉を痛めているか、感情を押し殺しているかのどちらかだった。
僕はベッドの中にもぐりこんだ。最近は眠りに入ることはできても妙に眠りが浅くなって朝起きると肩がこっていた。眠りに落ちる気がしなかった。悠に悪いなと思った。僕の紹介でつい先月からマキの家庭教師をさせていた。
彼女に限らず僕とマキの関係を知る人は皆、僕がつらくなったときは躊躇なくマキと別れろ、と言い、そのたびに無理だと思うけど、と付け加えるのだった。心が病んでいる恋人を持つということが痛々しいのか、他人の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)