鳥かご/土田
くの上に馬乗りになって「吐きそう、吐きそう」って遠まわしにおねだりするんだ。そして、まだ夢の途中を見ているようなぼくに抱きついてくるんだ。もう消えかかったディオールの香水を纏った、ふわふわのファーがついたコートこすりつけてくるんだ。そして、ぼくはいつも、ちょっと文句を言いながらも、猫背になったののちゃんの、なだらかで薄っぺらな背中をさすってやるんだ。そして、自分が満足したらののちゃんはお礼も言わないで、いきなり洗面所で歯磨きしだすんだ。すんごい一生懸命にごしごしするもんだから、洗面所の鏡がののちゃんの口から出た小さな泡でいっぱいになって、ぼくはそれを遠目で見つめるのが実は好きだったりするんだ。いつ
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