鳥かご/土田
 
いつだったかぼくが、どうしてそんなに一生懸命に磨くの?って聞いたら「世の中にはねぇ…」って、そのあとになにか言葉を続けようとしてやめたののちゃんに、ぼくはおでこにでこぴんされたんだ。ただそれだけなんだ。歯磨きが終わるとののちゃんはシャワーも浴びずに、ぼくの布団のなかに潜り込んで、左のおっぱいの上にあるほくろの辺りをさすりながら、いつだったかののちゃんが、すんごく酔っ払って、振ったビール瓶を勢いよく開けたときに付いた、天井の染みを見ながら、今日一日の出来事をひとり言のように呟くんだ。常連の公務員のお客さんに、最初はおっぱいを触られていたのに、いつの間にかお尻を触られていただとか、わたしの水割りがまず
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