大道の宵/板谷みきょう
 
は遠慮はいらない。もう少し前に来て戴ければ、済む事でございます。ささっ、この線までなら構わない。「人間扱いされてない。」など、文句や不満に対しては、なだめすかして、おだてたり。色々手をこまねきながら、人並みに暮らせましょうや。とは名ばかりの裏腹で、形ばかりの腹黒い建物に、ましてタコと変わらぬ大部屋で。保障とやらを与えまして、世間で暮らす人様の目には届かぬ生き地獄。実は現在この時も、尚ほとんどの片輪者、日の目の当たらぬその場所で、聞こえばかりが心地良い福祉と呼ばれるその籠か、囲いの中に囚われて、人目を忍んで暮らしているのでございます。聞くも涙、語るも涙の物語り。かく申すこの私、見た目に変わりはござい
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