大道の宵/板谷みきょう
間の風は冷たいながらも、知恵ある者は、人並みに暮らす事を夢見て居たのでございましょう。ところがでございます。時代はいつしか、移り変わるものでございます。明治の六年「見世物禁令」なるものが布達されましてからは、その生業をも禁止したものですから、残ったものはと申しますと『座敷牢』だけになったのでございます。町のあちこち人様の目の前から片輪者は姿を消し、いつしか行くえ知れずか、いずこへと忘れ去られて行ったのであります。さて、ここからが大切な所なのでございますが。先の大戦以降、瓦礫の町が次々と復興されていくその中で、普段は長屋の片輪者が、祭りの縁日ともなりますと、白地に赤くチンキを滲ませ巻いた包帯痛々しく
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