大道の宵/板谷みきょう
怪しげな男だった。
肩から吊したギターを見れば
テキ屋や博徒、極道者とは違うことは
一目瞭然なのだが
一風変わったいで立ちと
そのだみ声は、やはりヤシのそれであり
見世物小屋の呼び込みと同じ
口上師や詐欺師や山師の類いと
変わらないものだった。
しかし、背後には
薄気味悪い絵すら無いばかりか小屋も無く
口上すら
見世物の呼び込みとは全く違っていたのだ。
『さて皆さんお立ち会い。18世紀は欧州の国オーストリア。音楽の都で名高い、ウィーンでのお話しでございます。メスメルなる医学者がおりまして、ある時『生命エネルギー』なるものを発見したのでございます。解り易く言
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