深淵の森へ/はじめ
 
を凝縮した君の唾液の味がした 君は梅の木になってしまったんだね 僕は唾液を飲み込み心が潤って キスの匂いを鼻で嗅いだ キスの感触がいつまでも残っていた
 君は上着の左ポケットから黄色い錠剤のたくさん入った飴色の瓶を取り出した 睡眠導入剤だ
 君は湖の畔まで行って 小さな両手で水を掬って僕に見せた 「私は貴方が死のうと死なないまいとこの薬を飲むわよ。そう決まっているの。この世界を創造したのは私だけどこの世界を破壊するのも私なの。私はこの世界にいつまでもいてはいけない。だから、私はこの薬を飲むわね」
「待ってよ。僕も飲むよ。君と一緒に死ぬんだ。死んで、君といつまでも暮らしていたいんだ。僕にも薬を
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