虹のかけら(あぶくの妖精の話)/板谷みきょう
 
静かに海の底深くまで沈んでいったのでありました。

 ところで、みなさんは、あぶくの妖精をご存じでしょうか。あぶくの妖精は、海の底深くに住んでいて、いつも浜辺に白く波を立てては空に昇り、そうして暫くしては雨と一緒に海に戻ってくるものです。そんな毎日でしたので、少年の願いを気付かぬ筈もありませんでした。それに、妖精ですから素直な願いには、心が揺り動かされない訳がありませんでした。
 何とか少年の願いが叶うようにと、妖精界では禁じられている約束を、水や風や光の妖精達が止めるのも聞かずに、こっそりと空に昇った折りを見計らって、そしてほんのちょっとだけ虹のかけらを盗んだのでありました。それは、幸せの
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