落丁した夏/前田ふむふむ
 
って走った。
赤い服の生徒は、四号棟を抱きしめて、
透きとおっている、小さな口から、
アゲハ蝶を吐き出している。
       
わたしは、吐き出したアゲハ蝶を追いかけて、

   ・・・・・

逆光線のなかを揺れるように、
アゲハ蝶は止まる。
    父の声がする、
  噎せ返るような草のにおい、

止まったまま動かない。

  ・・・・・

動かなくなってどれ位経つのだろう。
お囃子の音とともに過ぎる祭りの賑わい、
屋台の列が、白くひかっている。
  ひかれた道も、さらに、白く塗りつぶされていて。
消せない白い傷が痛む。
わたしは五人分の綿飴を買い
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