落丁した夏/前田ふむふむ
買い、
包むように仲良く分ける。
みんなの手は、舌足らずな甘味で、
笑っていた。笑い声も白くひびいていた。
神社の階段は、急勾配で、
・・・・・
わたしは、狭い十二段の階段を昇る。
新しく取り換えた蛍光灯は、簡素なわたしの部屋を、
清潔に象る。
一本の静寂がアゲハ蝶の標本を見つめて、
窓辺に寄りかかる。
しきりに流れるものは、
あなたへの哀悼のために、流れていよう。
思い切り、湿った息を深くひろげてから、
わたしは、ひととき、
浅い微光の海に眠ろう。
戻る 編 削 Point(28)