落丁した夏/前田ふむふむ
光するわたしの血管に溶けこんでくる。
岬から見える学舎が剥落した風を送る。
わたしの遠い眼に映った、硝子張りの四号棟は、
飛行機雲の足元に寂しく佇んでいた。
戸口、窓は悉く、閉ざされていて、
建物は、眼を合わすことを拒否していた。
消せない血液の飛沫を上げて、
眼を逸らすことも拒否していた。
名前だけは、空に向かって息をしていたが、
決して、それを口にする生徒はなかった。
「あれは、わたしの眼帯だらけの眼・・・」と、
ひとりの赤い服の生徒が指差したとき、
周りのものは、顔をこわばらせて、
注意深く、地球儀を白紙一色に染めてから、
グランドを鋏で切って
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