落丁した夏/前田ふむふむ
やして、
焚き火に飽きた女たちは、若い鏡に覆われた鳥篭のなかで、
密かに呟き、その声の色を、
否定する鏡を割りつづけて、砕きつづけて、
やがて、歪んだ裸を舐めながら、
ふたたび若い鏡の木を植える。
あのなかに、いっしょに、
三日月の河を渡った女がいたような気がする。
わたしが、瞬きすると――、
青色に透過する翅は、海沿いを駆けている。
わたしは、追いかける。
・・・・・
塩からい指のしなりはなつかしい。
波に呼吸を重ねるように、翅をはばたかせて、
朝がひかりを、吹き上げると、
アゲハ蝶は、夜のなつかしい記憶を飲みこんで、
白光す
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