落丁した夏/前田ふむふむ
わたしは、アゲハ蝶を見失わないように、
夏の顔をもった翅と自由にいくえにも絡まる放物線を
追いかける。
目線の飛行を遮ろうと、
翅を小刻みに震わせながら、
鱗粉を散らして、・・・
落丁した夕暮れの言葉が、ひっそりと整列している、
(女たちには見えなかったのだけれど)
父母が熱病のように読み耽った詩碑が、
うすい佇まいを曇らせるほど、
三つ葉つつじに覆われている公園の骨を歩けば、
ビニールハウスの苺の味を覚えた女たちが、
井戸端会議で、
紙幣をやいて、焚き火をしている。
一枚は、湿った閃光に溶けて、
お互いに右手の性器を握った手相の滑稽さに
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