新川和江 ??〈永遠〉を志向する大きさ/岡部淳太郎
かった
つめたく燃ゆる銀嶺の雪を
ひらひら ひらひら
きらめく裾をひるがへし ひるがへし
冬の金魚の
いのちのかなしさ
(「冬の金魚」より)}
第一詩集『睡り椅子』(一九五三年・プレイアド発行所)に収められている詩である。「いのちのかなしさ」を慈しむような詩行に哀切さを感じる好篇である。詩人の詩的履歴の最初期にあたるこの詩において、既に技術的にはほぼ完成されているといっていい。金魚の鰭がゆっくりとうごめくさまを「ひらひら ひらひら」と常套的な表現で書き、さらにそれが詩の書き出しの一行であると同時に音楽的な繰り返しの効果を持ってもいる。そのことが、読者を詩の中に
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