続・風のうしろに風はない/佐々宝砂
 
もならん。だが詩は強い力を持っている。詩人一人の個人的な羞恥やかなしみをいっとき消すだけの力しか持たないこともあれば、一つの国を誤った方向に動かすほどの力を持つこともある。一人の無実の人を殺したり、一人の瀕死の病人を生かしたりもする。私は救われた一人だが、何の詩に救われたかは書かない。それは、いとうさんのようなタイプの詩人をどっぷりと癒しにひきずりこむような詩では、なかった。


作者としての私は、自分自身の詩にふりまわされたことがない。なんて出来が悪いんだああクソと思うことはしょっちゅうだけれど、何度も書き直して結局気に入らなくて破棄することもしょっちゅうだけれど、別にふりまわされてはいな
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