続・風のうしろに風はない/佐々宝砂
うことを必要とする人間がいることを忘れている。詩を書くということはなるほどつらいことかもしれないし、業深いことかもしれない、しかし、ひとつの詩がひとりの人を救うことはあるのだということ、詩にはそのような力があるのだということまでわすれてはいけない。詩人は常にこの重大な事実、詩の持つ力を忘れてはいけないはずだ。だのに、いとうさんはここではそれほどまでに重大なことを忘れている。
「誰しも、こんな業を背負う必要はまったくない」だと。そんなことがあるものか、「詩が書ける」ならば人は詩を書かねばならない。歌が歌えるならば歌わねばならない。踊れるならば踊らねばならない。描けるならば描けかねばならない。業
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