九月童話/紅魚
 
抱えて
君が、
ほろほろと泣いていますから。

何処からか流れてくるこの水は、
涙ではないようです。
淡水。
ああ、あ、あ、
これは君が零した菊の露ですね。

泣かないで。

ごめんなさいはもういいから。
なかないで、
なかないで、

真水の密度の中で、
あたしは不意に尾鰭を、
泳げることを思い出してしまう。
君に向かって走るみたいに泳ぎだしてしまう!!

(きみもあきにのまれそうだ、が、せいかい、ですね、そうでしょう?)
手を、
どうか手を、
伸ばした触れた指先から、
懐かしい青の気配。
あ、あ、
あれは君だった、
と。
(まって/またれ
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