ベロ出しチョンマに投げキスを/佐々宝砂
をへんてこな八の字にカクッと下げて、ベロを出して変な顔して「ほらあんちゃんの顔みろ、おっかなくねえぞ」と言う。あまりに変な顔だから、妹はつい笑う。そしてその変な顔のまんま、あんちゃんは槍に刺されて死ぬ。妹は笑ったまんま刺されて死ぬ。見てるひとたちは笑う、笑いながら泣く。そういう話だ。
私はこどものとき、この話が大好きだった。ベロ出しチョンマみたいな人と結婚したいもんだと思った。みんながしんどくてたまらなくて、怖くて、悲しくて、もうどうしようもない状況で、それしかできないから、変な顔して笑わせる。そういうことができる人は、本当にすてきな人なのだろうと、子ども心に思った。
ベロ出しチョンマ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)