ベロ出しチョンマに投げキスを/佐々宝砂
 
から、話す。そのうち話のネタも尽きる。尽きるから黙りこくる。黙りこくるからよけいにつらくなってゆく。本当につらかっただろうなと平凡な感想を抱きながら、私は、心のどこかで、ものすごく変なことを考えてしまった。

そこに一人の芸達者なお笑い芸人か、詩想が尽きることを知らぬ一人の詩人がいたらよかったのに、と。


「ベロ出しチョンマ」という創作昔話的な童話がある。百姓一揆で家族全員つかまって、はりつけにされる。幼いあんちゃんと、さらに幼い妹もはりつけだ。怖くてたまらないから妹はわんわん泣く。あんちゃんは、自分も怖くてたまらないんだけれども、泣きやまない妹に対していつもそうしてきたように、眉をへ
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