季節外れに壊れた扇風機/
 

まだ春だというのに
ひどく蒸し暑かった
と言います
わたしの身体の赤い液体は
ちょうど
二十六と、七の
あいだのメモリを指していた
と言います

いっこうに寝つくことができず
もそもそとベッドから這い出てきた主人は
煙草に火をつけて、床の上に座り込み、
しばらくのあいだ、放心
やがて
急に
何かを思い出したように
むくと起き上がり
薄暗い部屋の中をぎしぎしと歩き始めました

主人は、そのとき
扇風機
を探していた
のだと言います
扇風機といってもそれは
土台の部分がクリップで出来た
便利な小型機だった、と言います
そもそもちゃんと電気をつけてい
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