季節外れに壊れた扇風機/
 
ていればよかった
とも言っていました

扇風機は
きょねんの秋から、ずっと
埃をかぶった本棚の二段目の角の絶壁に、
クリップひとつで、
取り付いていて、
主人が最後にスイッチを切ったときの体勢のまま
首が、ありえない方向を向いたまま、
止まっていた、
と言います
そうして、暗闇のなか
ようやく扇風機を見つけだした主人が
あさっての方向を向いてしまっている扇風機の首を
しかるべき角度に正そうと
ぐいと捻った途端に
バキンと折れてしまった扇風機の首は、本棚の断崖を転げ落ちた―


まだ春だというのに
その日は
うだるように蒸し暑かった
と聴いています

そうして
季節外れに、無理矢理壊してしまった
小型扇風機の無残な姿に
むしょうにやりきれない気持ちになり
ややあって
床の上であさい眠りに落ちた主人

そんな主人の寝姿をみて
少し健気に思う
いつかのわたし

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