短編「The First Encounter」/板谷みきょう
 
と、場違いなボクの居心地の悪さと後ろめたさを感じながら尚、ボクの視線は、それなのにいつまでも彼女の指先から離れる事はなかった。ちらちらと盗み見している卑屈なボクは、彼女の指先がなぞった意識への関心を抱いたまま、自虐的な自分を恥ずかしく思っていた。その彼女は、笑うと立って居られなくなって、しゃがみ込んでしまう奇妙な性癖があった。その歩けなくなってしまう性癖を知っても、ボクは彼女を心からあいらしく感じていた。…だから。それで、そのあいらしい姿を見たいが為に、ボクは道化を覚えた。そして関心を惹く為だけに、ボクは道化者の仮面をいくつも持ち歩く様になった。ところがボクの心はその頃から、ボク自身も気付かぬうち
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