短編「The First Encounter」/板谷みきょう
 
想いの結晶として選んだ口紅に、無力で勝手な愛を託すしかないと諦めてしまうボクがいる。相手の彼女自身がどう感じて何を思おうと、仕方ないと諦めてしまうボクの愚かさ、それも一番大切な日から、どんどんとかけ離れて行く中で、「このまま逢わない方が彼女にとって幸せなのかも知れない。」なんて一人で決め付けて、その事に縛られては苦しみ、悲しくて切なくて「いっそ死んだ方がましだ。」と深い心の泥沼に沈んで行くのだ。

 そもそも愛なんかには祝福という形式や、幸せの約束や、愛し続ける保証なんか決してないものなんだ。だから愛イコール結婚なんて証明の上に成り立つ肉体の交わりは、虚しい習慣となってしまう。それであれば、彼
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