短編「The First Encounter」/板谷みきょう
 
で少女にチョコレートを渡すと、彼女から「チョコレートは女が渡すものよ。」とたしなめられ、クラス中の笑われ者になってしまった。という恋の悲劇を歌っているものだった。ボクは、今もってその唄のままの告白しか出来ないでいる様にしか思えない。デパートの化粧品売り場を幾つも回って、店員さんから耳にたこが出来る位に、厭と言うほど『今年の流行色はなにがし。』と蘊蓄を聞かされながら、何日もかけて歩きながら、又は宝飾店で貴金属を眺めながら、『彼女に贈り物ですか。』と声を掛けられたりする事で、ひとりよがりな、決して相手に伝わる事のない無駄で愚かな行為にしか、純粋な愛を感じる事が出来ないボクがそこにいる。そして全ての想い
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