短編「The First Encounter」/板谷みきょう
たはずだった。柔らかく唇を合わせたかったはずだった。きつく体を抱き締めたかったはずだった。それを希求し、止む事も出来ず、未だ続けているのだ。否、違う。あれこそ本当は、性行為がしたいだけのものだったのだ。愛そのものに対して、肉体的行為を知ってしまった為に、精神的な行為そのものを未熟なものとして隅へ追いやり、自分の都合だけの、相手を思いやる気持ちの一片もない肉体の略奪行為そのものを、愛と呼ぼうとしているのではないのか。ボクの混乱した思索の中で、そもそも愛とは一体何なのだっただろうか。好意を確認したいが為に、そして、その好意を永続的なものとしての保証が欲しい為だけに、抱き合うのであれば、そんなものの何処
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