短編「The First Encounter」/板谷みきょう
この問いが新たな形で詰め寄って来ている。もし家族ではなくて二人の異性だったらどうするつもりなのだと。その迷いの中で、岩から手を離し、再び濁流に飲み込まれ、成り行き任せのどちらも助けようとしない、無責任な愛の無いボクが居た。にも拘わらずそのボクが、寂しくしょげかえって膝を抱えながら、他の人以上に愛という名の肌の温もりを求めているのだ。いつまでも安定しない塞ぎ込んだ放浪するボクの心。求めて止まない欲望をかかえ込んで、今まさに座り込んでいる。いたずらに何度も手首に剃刀を当てた学生時代が、転がり込んで来ている。愛は暖かく、そして優しく美しいはずのものなのに、ボクの欲望は、あの頃に彼女と手をつなぎたかったは
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