春のための三つの断章/前田ふむふむ
 
   夢の瞬きのなかで掬び、
風見鶏が気まぐれに振り向く、
色づいた結び目はピアノ音階に流れて、
静寂として薫る夜の、生々しい呼吸の足跡のなかに、
生まれ出る炎の色をひとつひとつ旅立たせる。
       ゆっくりと抱きしめるように。

よぎる閃光の声。充当する一歩の音階を引き摺り、
押し寄せる、眩しい暗闇が、・・・
  (汗ばんだ白い乳房にみえる――やわらかい音を染めながら、
・・・冬の静物を動かして、
わたしの手は、思わず頬張る、
滴る血のように、輝きすぎる、この林檎の感触は、
      はじめて見た山々ではないだろう。

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赤い空は、見た
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