風のうしろに風はない/佐々宝砂
られる、恋愛詩や友情の詩のような方向性ではない。権力に対する抵抗のような方向性でもない。
それは、たとえば、ボードレールが「何処へでも此の世の外へ!」と書いたあの叫びに近いような、ある意味では非人間的な何もない場所へ向かってゆくような、世界の果てに向かってゆくような、「アルンハイムの領土」や「霧の都」に向かってゆくような、かつては存在したが今はもうこの世にはないアルカディアへの夢想に向かってゆくような……そんな方向性だと、私はずっと感じてきた。
>おちたところが
>ぼくのせかいの涯だ
>そこから聴覚が回復してくる
(みつべえさん作「紙つぶて」より引用)
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