【短:小説】深夜の電話/なかがわひろか
 
僕はさっさとこの電話を切って、眠りにつくべきなのだ。OKそれでいい。僕はこのまま眠りについていいんだ。
 「あの、間違い電話じゃないでしょうか。どなたかと間違われていると思うんですが。」努めて、努めて僕は儀式的な対応をした。完璧だ。僕は何も間違っていない。
 「いや、いいんだよ。君がそういうのも無理はない。君にとっては、ある意味・・・傲慢な言い方かもしれないが、僕は雲の上のような存在だろう。だがそれを危惧する必要なんか何もない。僕はもう君のことを十分に親友だと思っているんだから。」
 僕はもう一度、丁寧に(本当に丁寧に)先ほどの科白を繰り返した。
 その作家は、しばらく沈黙した後に
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