僕は神様/はじめ
 
を大部分失って、黒褐色の血痕が染みついている。どうやら相当前にできたものらしい。
「……パパ、この暖かくて唾みたいにベトベトしている赤いモノは何て言うの?」彼女は自分の股に右手を突っ込み、手にべったりとした新鮮な血を塗ったくり、僕の目の前に煌々と鈍く紅に光る手の平を全開した。
「……ひぃぃぃぃぃぃ…!!!」
 僕は声にならない、素っ頓狂な悲鳴を上げた。目の前で口を開いている血塗られた五本の指が獲物を食い尽くした後の肉食獣のように映り、そして吠えた。なぜ僕があんな情けない悲鳴を上げたかというと、あまりにも非日常的な光景に不気味さを心底ありありと感じたと同時に、僕はこの世界では類い希な存在である
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