僕は神様/はじめ
つかこの赤ん坊がいつか言葉を覚え、話せたり話を聞けたりできるようになったら、僕がかつていた世界の物話を何一つ隠さずにたっぷり教えてやろうと思うようになった。悲しかったことや楽しかったこと、感動したことや落胆したこと、辛かったことや幸せだったこと、どきどきしたことやびっくりしたことなど、この世界で生きている限り、決して味わうことや体感することのできないものを、この子にはどうしても教えてあげたかったからだ。
まず、この子には言葉を教えることにした。始めのほうは教えるというか、彼女が起きている間は常に僕はお寺で仏典を唱える坊さんのように、ずっと彼女の顔の前で思いつくままに言葉のシャワーを浴びせていた
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