僕は神様/はじめ
処からかふらっと、繁殖期を迎えた渡り鳥の群のように押し寄せて来るのだった。
だからこそそういう時のために、捨てずに普段は気がつかない場所に平凡な記憶のビニールカバーを被して隠して置いて、いつでもすぐに思い出せるように心の片隅に大切に保存してるのだ。
僕が自殺した、直接の原因となった現世での一番悲しい思い出も、傷や汚れが付かぬように、いつも手入れを欠かさずやっている。この思い出という名のフィルムを媒介にして、今、僕の傍らで真っ赤な布で覆われて死んでいるこの子のために昔、僕がかつて生きた世界ことを惜しみもなく話してあげていた。
僕がこの世界にやって来たばかりの頃、今から十数年も
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