僕は神様/はじめ
う、そういうものだった。
ずっとスニーカーに視線を集中させていたためか、目と首に疲れを感じ、気分転換のために首の関節をポキポキと鳴らし、軽いストレッチをし、瞼を半分ほど下げながら辺りを見回してみることにした。しかし何も見あたらなかった。この虚無の風景など、気晴らしには一滴たりともならなかった。
足下に再び視線を降ろした。周囲一帯に比較するものが何も無いせいなのだろうか、まるで自分の身体が空中に浮いているような錯覚がした。ちょうど、母が洗濯物を取り込む姿をただ見つめることしかできなかったあの時のように。高所恐怖症の僕の顔から血の気がすーっと、ゆっくり引いていくのを感じた。と同時に、十本の指先
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