僕は神様/はじめ
 
ただ僕は母の懸命に洗濯物を取り組んでいる姿を暖かく見守っていることしかできなかった。僕がなぜ、死ぬ間際にわざわざ母に会いに来たのかという理由が今はっきりと理解できた。
 そうこうしているうちに、一階からけたましく響く電話コールが鳴った。まだ三分の一ほど洗濯物をベランダに残したまま、母は下へ降りていった。僕は薄れゆく視界を頼りにふらふらとベランダに近づき、天の恵みを浴びて嬉しそうに微笑む洗濯物達と一緒に、この恩威に感謝の念を雨空に向かって勢いよく飛ばした。
 

 最後にふっと気がついたとき、病院らしい空間ではっきりと、母が僕の間近で僕の名を呼び続ける声が聞こえた。僕は最後に母へニコッと天使
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