僕は神様/はじめ
 
慌てふためいてせっせと洗濯物を取り組んでいる主婦達が結構いた。中には口に海苔煎餅をくわえたまま、洗濯物を部屋の中に取り込んでいる主婦もいた。けれども、一番大変そうに見えたのは、背丈が人一倍小柄ながら、人一倍の洗濯物を人一倍、一生懸命取り込んでいる母だった。なにも自分の母親だからといって贔屓の目で見ているのではない。そうではないのだ。母がなぜか愛おしく感じられたのだった。こんな気持ちは生まれて初めてだった。僕も取り込むのを手伝おうと思ったが、僕の身体はすでに冷たくなり始め、言うことをまるで聞かず、視界にも死を警告する薄白い霧が少しずつかかってきた。もはやいつ意識を失ってもおかしくない状態だった。ただ
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