僕は神様/はじめ
 
いくら小柄な母がたった一人で膨大な家族の洗濯物を頑張って家の中へ取り込もうとしても、すでに手遅れなのは誰の目からも一目瞭然だった。けど卑劣な雨は全くその手を緩めようとはしなかった。今日は土曜日ということもあって、僕の家に限らずどこの家庭でも、この一週間で溜まりに溜まった家族の洗濯物をまとめて干す主婦が多いのではないかと思った。もし天気の神様というものが実在するならば説明はもっと楽になるに違いないのだが、その神様が退屈しのぎにもっともっと激しく雨を降らせて困らせてやろうと、地上の主婦達に意地悪をしているようにも見えた。
 近所のベランダを見回してみると、ようやく夕立が降ってきたことに気づいて、慌て
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