死刑執行人/はじめ
 
という噂が立った 医者に見せると「もう長くはないでしょう」と診断された
 自分の罪の為にそうなったのだから自業自得なのだが 死刑執行人として抱いてはいけない同情心が僕には芽生えていた そのことを殺された遺族達が知ると 怒りに猛反発し 「衰弱死してしまうまえに殺せ」と抗議があった
 署長も考えを決めかね ついに死刑執行日が決まった
 それまでの間僕は暇さえあればひょっこり彼の元へやって来ては 様子を見たり話し相手になったりした 決して罪人に同情してはいけないのだが 僕は鉄柵と心の壁に感情を押しつけて 彼に優しく接していた
 僕はこの男を殺したくはなかった 落ちてはいけない禁断の恋のように僕は
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