死刑執行人/はじめ
僕は彼に同情していた しかしそんなことは許されなかった
やがて運命の日がやって来た 男は衰弱した体で泣き叫びながら必死の抵抗をし 暴力を振るって 二人に怪我をさせた 長時間の格闘の末 彼は取り押さえられ 処刑室に連れて行かれた
僕は小便を垂らし 体を異常な程震わせ 発狂している男を電気椅子に座らせ 黒い布を被せ 頭に装置を取り付けた 彼はずっと母親の名前とマリアと泣き叫んでいた 精神が攪乱している中でスイッチを押すのは そして彼を処刑するのは僕にとって人生最大の苦痛だった
署長がON! と叫んだ 僕はスイッチを押せなかった 署長がON!! と僕に命令した 僕はスイッチを押せなかった 署長が怒りを爆発させて ON!!! と絶叫した 僕は震えて動かない右手をその上から無理矢理左手で叩きつけて泣く泣くスイッチを押した
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