代表ジェラルミン、おおいに語る/hon
 
を噛みくだく容赦ない歯牙であり
おそるべく地獄はいまや現出していた
なんでみんなと一緒に逃げなかったのか
彼は恐怖に締めつけられるようであったが
キツかったのは自業自得とよりほかは考えられないことだった
何もかもおれが悪いのだ!
男は全存在をかけてオロオロすると
すぐそばにあったブティックに飛びこんだ
ショーウィンドウに展示されていたマネキンの
得意げに着ていた毛皮のコートを剥ぎとると
すっぱだかのマネキンを押し倒してしがみついた
おお ここで最後の瞬間を迎えよう
マネキンは固くつめたく拒絶するような感触であって
彼の期待していた柔らかさもあたたかさもなかったが
この際
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