【小説】老紳士の秘密の部屋/なかがわひろか
を常に補充しておけばいい。家にいる間は目が見えないことも忘れてしまいそうだ。
老紳士には一つだけこだわりがあって、シーツだけは毎日洗い立てのものが言いと言う。気持ちは分かる。ホテルのようにぱりっとしたシーツの上で眠れるのは本当に幸せだ。それが毎日できることは、誰にでも共通の喜びだ。なんてことはない。私はそんな老紳士の気持ちに答えようと、シーツだけはいつも完全にぱりっとしたものを用意した。老紳士はそれをとても喜んでくれた。
私は時々、老紳士の要望で、本を読むことがある。彼はもう小さな頃から目が悪いらしく、絵のついた簡単なものを眺める程度で彼の読書生活は終わっていると言っていた。どんな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)