【小説】老紳士の秘密の部屋/なかがわひろか
率がいいので、週に何回かまとめて洗う。それに関して老紳士は何も文句を言わない。しかも食事にいたっても、お金持ちの割りにグルメではなく、どんぶり物で手早く済ませたいらしく、極めて迅速に終わる。ようするに私の仕事は、これらの作業を午前中極めてゆっくりと丁寧に、何度も見直しをしながら行うのだ。それはそれは丁寧に、じっくりと行う。これなら普通の主婦の方が大変そうだ。嫁入り修行にもならない。
午後は、食事の後、すぐにお昼寝の時間になる。彼は黙って寝室に行き、二時間くらい横になる。その間私は、仕方がないのでお菓子を作って待つことにした。お菓子なんて作ったこともなかったが、二週間もすればレパートリーも増え、
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