【小説】老紳士の秘密の部屋/なかがわひろか
 
さらに言うと、みんなが座っている椅子も種類の同じ椅子だ。昔から食器と、家具が同じものをそろえている家はお金持ちが多かったという記憶がある。ここはそれを集大したような家だ。確かに、家政婦もいても申し分ない。家政婦を募集してもいい程度の条件は十分に満たしている。
 と、そんなどうでもいいことを考えて時間をつぶしていた。お金持ちの家であれこれ想像を巡らせても、きっと少し頭が禿げ上がって、口ひげを生やし、葉巻を吸っている初老の紳士が住んでいる、くらいの予想は誰にでもつく。誰にでも予想できる想像をするくらい、退屈な時間は、苦痛でもある。
 やっと自分の番がやってきた。私は満面の笑みを浮かべて(それで容姿
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