【小説】老紳士の秘密の部屋/なかがわひろか
 
れ以外の会話はとてものんびり、だけど少し意味深で終わっていた。しかしそれも悪くない。そんな雰囲気も、この家に合っている気がした。

 季節が過ぎ、冬になった。といっても、今年は暖冬だった。雪も大して降らない。毎日冬の証をどこかに探してみるが、残念ながら、今のところどこにも見当たらない。それでも朝は冷える。私は、起きてきたばかりの老紳士に温かい飲み物をすぐに出せるように、それまでよりも少し早めに家を出ることにした。
 温かい紅茶を入れて、老紳士を迎えると、彼は寝起きの顔でにっこり笑って、ありがとうと言った。私の家政婦ぶりも大分板に付いてきた。

 その三日後だった。

 老紳士は心筋梗
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