【小説】老紳士の秘密の部屋/なかがわひろか
 
いられない。どんな声でも頑張れば特徴を出せるはずだ。もう何がなんだか分からない強引な理由に自分を納得させ、ここに来た。
 面接は十時からと書いてあり、待合室には二十人くらいの女性が特に緊張感もなく順番を待っていた。
 十分で終わる人もいるし、三十分くらいかかる人もいて、面接時間はまちまちだ。そして出てくる人は違う出口から出て行くようで、こちらからは一切のその顔は見られない。故にどのような戦略を練ればいいのかも分からない。そんな中で緊張感を保つほうが大変だ。
 それにしても。
 二十人の女性を収容できる部屋が普通にある家なんて初めてだ。しかもそれほど狭さを感じない程度に座ることができる。さら
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