鸚鵡の偉業/蔦谷たつや
また激しい怒りに変わった。
とうとう、臣下も民もみんな国を追われた。
やがて、幾日かがたった。
王様は気が付いた。
大切にしていた、唯一の家族はいない。
自分のために働いてくれた臣下も、不平もなくおのれの愚策に従った民もいない。
誰もいない。愚かで、哀れな自分一人だけ、である。
王様は悲しんだ。ただ悲しんだ。
彼は一人きりで、大きな大きな寝室で泣いた。
何時になく綺麗な夜空に、何時になくはっきりとした月は一層、王様の涙を呼んだ。
今夜、王様は彼の自慢であった長髭さえも濡らした。
やがて、朝になった。
かつては民で賑わった朝市など、今はない。静かすぎる朝であった。
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